【心理学】理不尽から生まれる悪意とどう付き合うか?

【心理学】理不尽から生まれる悪意とどう付き合うか?

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AlphaDrive/NewsPicksの変革人材研究機関「POTInstitute」では日々変革を起こす人や組織を研究し、ビジネスパーソンの学びになる情報を配信しています。「小塩先生の3分心理学解説」は、心理学者の小塩…

AlphaDrive / NewsPicksの変革人材研究機関「POT Institute」では日々変革を起こす人や組織を研究し、ビジネスパーソンの学びになる情報を配信しています。「小塩先生の3分心理学解説」は、心理学者の小塩 真司教授が、数字で測れない能力「非認知能力」について解説する連載です。

今回のテーマは「突発的な悪意」。日常生活やビジネスにおいて、理不尽だと感じると突発的な悪意に襲われてしまう経験は誰もがあるでしょう。そんな悪意と上手く付き合うための方法について聞きました。

プロフィール

小塩 真司 Atsushi Oshio

早稲田大学文学学術院文化構想学部教授
名古屋大学大学院教育学研究科博士課程後期課程修了、博士(教育心理学)。中部大学人文学部准教授を経て、2012年、早稲田大学文学学術院文化構想学部准教授。2014年より現職。パーソナリティ心理学、発達心理学が専門。『性格がいい人、悪い人の科学』『SPSSとAmosによる心理・調査データ解析』『大学生ミライの因果関係の探究』など、著書多数。

【今回のお悩み】
現在、営業の仕事をしています。同僚や上司に対して突発的な怒りやいらだちが最近増えてきています。営業で課せられているノルマを達成できず、上司にプレッシャーをかけられているとき。一方で同僚が仕事で成果を上げているのを目の当たりにしたときに、自分でも驚くぐらい意地悪な気持ちが生まれてきてしまいます。このような感情を上手く浄化するにはどうすればよいでしょうか?

自分が損をしてでも、他人を貶める「悪意」

仕事環境でストレスが溜まっているようですね。

それでは、まず悪意そのものについて考えてみましょう。悪意とは「自分が不利益になることも顧みずに、相手の不利益を誘導すること」をいいます。

例えば、同僚に対して強烈に腹が立ったとします。そこで同僚の悪い噂を故意に流せば、自分の不利益につながる可能性もありますよね。噂を流したのが自分だとバレたら自身の評価を下げることにつながり、自分の立場が危うくなることも。

このように自分の不利益になることを顧みず、相手の不利益になるようなことをしてしまうことを悪意といいます。悪意は、衝動的にしてしまう場合と、自滅を承知の上で計画的に行う場合もあります。

━━なるほど。「決して自分の利益にはつながらない」という点が悪意の特徴なのですね。

その通りです。簡単な経済ゲームで確認してみましょう。

例えば、1000円を2人で分配するとします。相手に900円、自分に100円 分配される場合、あなたはこれを受け入れられますか? 受け入れれば100円 手に入りますが、拒否すれば両者のお金が没収されてしまうルールです。

━━う~ん。100円を失うのは惜しい気持ちはありますが、さすがに分配比率の差に理不尽を感じてしまいます。

そうですよね。最も合理的なのは、どんな比率で分配されようが受け入れることです。けれども、自分の取り分が少ないと理不尽だと感じ、多くの人は拒否してしまうんです。多くの人が拒否を選択するので、基本的にはみんな意地悪なんです。

ビジネスシーンに転換すると、上司から注意されてムカついたので上司を貶めるために自分が不利益になることでもやってしまう。また、会社全体に悪い影響を与えることになったとしても、嫌いな同僚が失敗をするように仕向けるといった行為が悪意です。つまり、自分の利益を最大化しようとしない行為が悪意なのです。

一方で、自分だけが得をしたいから他の人を上手く使う言動は、悪意とはいいません。単に自己中心的な行為です。

━━改めて怖い感情ですね。自分にも相手にもよくない行為は、極力避けたいものです。意地悪を鎮める方法はあるのでしょうか?

先ほどの経済ゲームの結果が示しているように、基本的に人はみんな意地悪です。

意地悪の動機である「むかつく」という感情は人にもともと備わっている感情なので、悪いことではありません。「自然な感情」だと受け入れましょう。ただそれを抑制する理性を上手く働かせる必要があります。

意地悪は「会社全体にとって不利益になり、社会的な制裁を受けることになるかもしれない」と冷静に考えることで、ある程度抑制できるかもしれません。意地悪をしたくなった際にメリットデメリットを整理して分析する習慣を持つことは一つの手です。

ただし念頭に置いておくべきなのは、悪意が生まれる文脈は、個々人によってまるでバラバラだということです。その人の生きてきた背景によって、大きく異なってきます。

たとえば、経済ゲームにおいてどのように分配されたとしても「少しでも利益になればよい」と少額でも受け取る人はいます。日常に置き換えれば、色々嫌なことはあるけれど、小さなことでも幸福だと感じることができれば、悪意は生まれないわけです。

悪意の傾向を知り、よりどころを作ろう

━━メリットとデメリットを分析することで、悪意をコントロールできるわけですね。そして悪意が生まれる背景は、人それぞれでバラつきがあるとなると、自分に悪意が生まれる傾向を知っておくと良いのでしょうか?

おっしゃる通りです。人は放っておけば必ず意地悪します。ただそれを止めるのが人間の文化であり教育です。

メリットとデメリットを明示しても理性が効かず、突発的に意地悪をしてしまう兆候がある人には、背景要因を分析することをおすすめします。

自身に悪意が生まれる傾向を知っておけば、対策もしやすくなります。そうなれば、悪意が生まれにくい環境を自分で作ることができます。

家族や知人に頼るのも一つの手段です。守秘義務が担保され、安心して気軽に相談できる場所があるだけで人は救われます。場合によっては、心理カウンセラーや産業医などの医療機関を活用しても良いでしょう。孤立して誰にも相談できないのが最もよくありません。

━━なるほど。職場のことを誰にも話せず、一人で抱え込み過ぎていたのかもしれません。

今の時代、「心の内を語り合える場所」がとても少なくなっています。だからといって、匿名でネットやSNSに書き込みをしてストレスを発散していたら、それは誹謗中傷となり悪意に近づいてしまいますよね。

ただし、悪意の抑制に法則はありません。意地悪な行為は、誰でも行ってしまう可能性があり、コントロールできるとは思わないことです。それほどに悪意は、誰もに備わる非常に厄介な感情なのです。

例えば、経済ゲームで理不尽な分配の理由を「あなたの能力が低いから」と追い打ちをかけられれば、多くの人がムカついて突発的に不合理な判断をしてしまうでしょう。けれども、ビジネスにおいては常にそういった場面に出くわします。それが、社会で生きていくということなんです。

━━営業の仕事でも、常に数字の競争を求められます。となると、悪意は抑制するものではなく、緩和しながらうまく付き合っていくぐらいのマインドが良さそうですね。少し気持ちがラクになりました。

いい考えだと思いますよ。世の中を上手く生きていくためには、悪意が生まれにくい環境を持っておくこと、それと同時に仕事以外でストレスを解放する術を持っておくことです。趣味や運動などで自分が深く没頭できるものがあれば、悪意を緩和することができます。

また、最近推奨されているような副業を持つと効果的でしょう。今の時代一つ
の職場に執着せず、自身のキャリアやスキルの選択肢を広げておくことが大切
だと思います。視野が広がり、悪意の緩和につながります。

【小塩先生のアドバイス】

悪意は誰もが持っているものです。無理に抑え込もうとするのではなく、自分が悪意を抱きやすい状況の傾向をつかみ、対策を取ることが重要です。また、周囲の人に相談したり、副業をしたりすることで、緩和することができるでしょう。

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