現業で成果が出ていなくても。企業を変える人材とは
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職場に、「突然、思いもよらない新しいアイデアを出す人」や「周りが驚くくらい素直に誤りや失敗を認める人」はいないだろうか。私たちPOTInstituteは、組織に変革をもたらす人を「変革人材」と呼んでいる。本連載は、POT…
職場に、「突然、思いもよらない新しいアイデアを出す人」や「周りが驚くくらい素直に誤りや失敗を認める人」はいないだろうか。私たちPOT Instituteは、組織に変革をもたらす人を「変革人材」と呼んでいる。
本連載は、POT Instituteが主な研究の対象にしている変革人材の特徴や活かし方、発掘方法などを解説する。職場に潜む変革人材を見出し、活躍させるための土台となれば幸いだ。
平尾 譲二(ひらお・じょうじ)
AlphaDriveグループ執行役員 / POT Institute研究所長
東京工業大学工学部建築学科卒業。株式会社リクルートに入社し、じゃらんnetの集客戦略全般を担当して全社イノベーション賞を受賞。2011年に社内新規事業制度「NewRING(現Ring)」でグランプリを受賞。新規事業開発プログラム「Recruit Ventures」を立ち上げ、事務局長兼インキュベーションマネジャーとして風土醸成・案件募集から事業育成・人材育成までを統括。2018年8月、株式会社アルファドライブ取締役に就任。2019年11月、保有全株式を譲渡してユーザベースグループ入りし、NewsPicks for Businessの事業開発を兼任。
新規事業の現場に衝撃、変革人材の言葉
「変革人材」がどのような人材なのかイメージしてもらうために、ある実在の人物を紹介しよう。企業が新たな収益の柱を立てるため、新規事業のアイデアを募集し、そこに起案をした男性の話だ。
新規事業開発の現場では、起案者が生み出したアイデアを企業の意思決定層が審査する会議が開かれる。とある企業の新規事業審査会で、起案者のアイデアに上司からの厳しい指摘が入った。彼が半年かけて検証してきた事業仮説が崩れそうになっていたのだ。「この先に提供価値はないのではないか」という指摘に対し、彼は驚くべきことに「そうかもしれませんね」と仮説を捨てた。

(iStock/Dalinas)
半年かけて信じてきた仮説に固執したくなるのが人間というものだろう。起案した本人なのだから、特別な思いも込もっている。それでも新しい事実を受け止め、仮説を変えるという態度を瞬時にとった。企業に変革を起こす変革人材は、こうした「素直さ」を備えていることが多い。
上長の意見に素直で、従順で、忠実であるという意味ではない。どんなに不都合でも、気分を害する状況でも、新しい事実を受け入れて興味を持ち、仮説を改めて次の行動へつなげることこそが、ここでいう素直さである。
新規事業の現場では、ときおりこのような場面に出くわす。起案の初期から仮設実証期まで、さまざまなタイミングで新しい事実へのフットワークの軽さを見せる人物がいるものだ。彼らに共通する特性、資質とはどのようなものなのだろうか。本連載を通して、紐解いていこう。
不確実な時代に価値を発揮できる変革人材とは
「変革人材」を理解するために、イメージしやすい「優秀人材」と比較してみよう。優秀人材は、既存事業で成果を上げているエース人材のことである。現場で価値を発揮してくれる貴重な人材。周りから優秀な人だと認識されていてく、安心して仕事をお願いできる人物だ。
ではこの優秀人材と比較することで、変革人材に迫ってみよう。
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優秀人材:変革人材
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スキルフル:スキルはまちまち
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業績優秀:業績はまちまち
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コミットメント強い:コミットメントはまちまち
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関係者確認・調整得意:自分軸で勝手に動く
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無駄が嫌い:無駄と思わない
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明確にしたい:曖昧が好き
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ミクロに強い:マクロとミクロを行ったり来たり
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現実を見る:未来を思う
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失敗は避けたい:失敗に素直
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変なことをしない:変なことをする
この表でポイントとなるのは、一般的に仕事をする上で避けがちなこと、失敗や曖昧、無駄といったものへの態度だろう。また、自分軸で勝手に行動することも、企業では歓迎されない態度ではないだろうか。こんな人を変革人材と持ち上げることに眉をひそめる向きもあるかもしれない。
それでも、時代は彼らを求めはじめている。VUCAの時代において、デジタル技術の発展やESG経営の必要性に伴い、仕事の中身が変わってきている。同じ商品が通用しなくなり、畑違いのサービスが競合化してしまうなど、自分たちの武器が無力化し先が見通せなくなるのが現代だ。そんなシーンで企業成長の一翼を担うのが、変革人材というわけだ。
曖昧が好きだから、先行き不透明な状況も楽しめるのかもしれない。無駄を感じにくいから、新しい可能性を探求し続けられるのかもしれない。失敗に素直だから、心が折れにくく、行動を続けられるのかもしれない。このような特性を持つ人は、転換や変革が求められる現代において、ますます活躍の場を広げていると言えるだろう。
価値創造には、変革人材も優秀人材も必要だ
変革人材こそがこれからの企業成長に不可欠ではあるが、変革人材が優秀人材にとって代わるわけではない。変革人材は万能ではないため、彼らだけでは仕事が回らない。彼らはむしろ、不完全な存在だ。

(iStock/Anna Semenchenko)
ここでお伝えしたいのは、優秀人材と変革人材が、自分と相手を理解して信頼し、新たな時代の課題に取り組むことが理想だということだ。
活躍する場面も、大まかに分かれているように思う。例えば、課題を解決したり、推進したりするのは、優秀人材の方が圧倒的に得意だろう。一方、物事が曖昧な中で課題を発見したり、方向性を見定めたりするのは、変革人材の方がストレスなく行えるかもしれない。新しい事業を生み出していく中で、例えば事業を始めたての0→1(ゼロイチ)フェーズ、1→10(イチジュウ)フェーズだと変革人材の方が、その先、100→1000(ヒャクセン)フェーズなどになってくると、優秀人材が手綱を握るだろう。時代が進み、変革人材のような人物が活躍する、優秀人材にとっては「ややこしい」シーンが増えてきた、ということである。
中には、「優秀人材」かつ「変革人材」という人も存在する。このようなスーパースターを育成することは可能だ。それも、変革人材からのルート、優秀人材からのルート、両方あるのだ。別の機会に、触れてみたいと思う。
執筆:平尾譲二
編集:高村真央