【心理学】組織を強くする、好奇心の生かし方
Outline
AlphaDriveが運営する人と組織の研究機関「POTInstitute」では日々変革を起こす人や組織を研究し、ビジネスパーソンの学びになる情報を配信しています。新連載「小塩先生の3分心理学解説」は、心理学者の小塩真司…
AlphaDriveが運営する人と組織の研究機関「POT Institute」では日々変革を起こす人や組織を研究し、ビジネスパーソンの学びになる情報を配信しています。新連載「小塩先生の3分心理学解説」は、心理学者の小塩 真司教授が、数字で測れない能力「非認知能力」について解説します。
今回のテーマは「好奇心」。心理学的に見て、あらゆる行動の源泉となる好奇心とはどのようなものなのでしょうか。好奇心をうまく活用する方法についても、話を聞きました。
プロフィール
小塩 真司 Atsushi Oshio
早稲田大学文学学術院文化構想学部教授
名古屋大学大学院教育学研究科博士課程後期課程修了、博士(教育心理学)。中部大学人文学部准教授を経て、2012年、早稲田大学文学学術院文化構想学部准教授。2014年より現職。パーソナリティ心理学、発達心理学が専門。『性格がいい人、悪い人の科学』『SPSSとAmosによる心理・調査データ解析』『大学生ミライの因果関係の探究』など、著書多数。
好奇心はひとつじゃない、人によって違うもの
━━まず心理学上の好奇心の定義を教えてください。
実はしっかりとした定義があるわけではなく、心理学的にも説明が難しい言葉です。用語の定義としては、「探索行動の動機になる感情 」が適切かと思います。
知っておいて欲しいのは、好奇心は「もっと知らないことを知りたい、理解したい」といったポジティブなものとは限らないということです。
例えば「ネガティブな好奇心」もあります。仕事でもプライベートでも、やらなければいけないことをやるために「放っておきたくない」「情報のずれを埋めたい」といったものです。先ほどと同じ探索行動の動機ではありますが、どちらかというとネガティブな感情に紐づいていますよね。
また、知らないことを知ること自体がスリリングでエキサイティングだと感じる人もいます。これも、 ポジティブな好奇心とは微妙に違います。
━━好奇心が「ない人」もいるのでしょうか?
あるなしというよりは程度の差だと捉えた方が良いでしょう。どんな人も多かれ少なかれ好奇心は持っていて、その強弱や性質には個人差があります。
そもそも好奇心は人間に限らず、多くの生物にも見られます。好奇心のもととなるような探索行動は、オタマジャクシにも見られるという研究もあります。同じ生物でも好奇心旺盛で、あちこち動き回っていろいろなものを探し回る個体もいれば、じっと1ヶ所にとどまって一定の範囲だけで生活する個体もいます。この差は種の保存という観点から説明できます。
遠くまで行けば、もとの場所よりも生きやすい環境を見つけられるかもしれません。しかし、道中で傷つき、命を落としてしまうケースもあるでしょう。一方、1ヶ所にとどまっている場合、不測の事態で傷つくリスクは少ないですが、突然近くの水場が干上がるなど環境の変化が起き、移動を余儀なくされる可能性もあります。
つまり、多様な好奇心のレベルを持つ個体の集団の方が、集団として生き残る可能性は高まるのです。人間も生物の1種ですので、同じことが言えます。
好奇心の多様性を生かし、強い組織を作ろう
━━好奇心はトレーニングによって伸ばせるのでしょうか?
伸ばせるかもしれませんが、本当に伸ばした方が良いのかは疑問です。好奇心が高いからといって仕事がうまくいくとは限らないからです。新しいことを次々と知りたいと思う人は、ひとつのことで長続きせず結果が出せないこともありますよね。
人に対する好奇心が高い場合でも、他者に興味を抱くからといって人間関係がうまくいくとは限りません。むしろお互いに深い関心を抱かずに関係性を維持した方が、うまくいく場面もあるでしょう。
━━自分の好奇心を、仕事に活かすには何が必要なのでしょうか?
繰り返しですが、好奇心を一括りに捉えず、自分の性質を理解することが重要です。
好奇心を感じるきっかけが人と関わることなら勉強会などをやると良いでしょうし、ひとりでもくもくと探求することならそのための環境をつくるべきです。また承認欲求が満たされることなら、自分の考えをブログや YouTubeで発信しても良いと思います。お金がきっかけになるなら、収益化できる方法を探すと良いでしょう。
自分の性質を知るには、強みにばかり着目せず、弱みを逆手に取って強みに変換することも有効です。知らないことが不安なら、その不安を探索の動機に変換すれば良いのです。
好奇心を仕事に活かすには、各自が自分の性質に目を向け、自分に合ったやり方を工夫する必要があります。
━━メンバーの好奇心を伸ばすために、マネージャーにできることは何かありますか?
多様な好奇心のあり方を認め、メンバーごとに違う探索のあり方をサポートできると良いと思います。
また、新しいことを生み出しやすいチームをつくるためにも、多様な好奇心のレベルを持つ人々を受け入れる寛容さは重要だと思います。会社も一つの集団だと捉えるならば、先ほどの「種の存続」ではないですが、好奇心の多様性が大きいほど集団としては生き残る確率が上がるからです。
不確実で予測が難しい現代だからこそ、組織が生き残っていくためにはメンバーの多様な好奇心が欠かせません。メンバー一人ひとりの好奇心を生かし、チームの成果につなげていくことこそ、現代のマネージャーに求められる力なのかもしれません。
本記事は、POT Instituteの取材に基づくものです。
お問い合わせは jinzai@alphadrive.co.jpまで